ドキュメンタリー映画『FREESTYLE』の監督ケヴィン・フィッツジェラルドがヒップホップを語る。

ヒップホップ・カルチャーの一つである“ラップ”に初めて焦点をあてたドキュメンタリー映画『FREESTYLE:THE ART OF THYME』。即興ラップ・スタイル“フリースタイル”をするラッパーたちを中心に、ブレイクダンサー、DJ、ヒップホップ・コミュニティーを7年に渡り続け、リアルなヒップホップ・シーンと歴史を描写しMCたちによって作られたポエトリー・シネマだ。出演者は、日本でも高い人気を誇るモス・デフ、ジュラシック5から'90年代前半の西海岸を代表するフリースタイル・フェローシップ、メデューサといった重要人物たちの貴重映像が凝縮されている。この『FREESTYLE』の監督ケヴィン・フィッツジェラルドが4月に来日し、フリースタイル、ヒップホップ・シーンについて熱く語ってくれた。ヒップホップを映像という形で伝える彼の思いとは‥‥。


text_MAYUMI OHKUMA transration_YUKO ASANUMA


FREESTYLE FELLOWSHIP
___ヒップホップとの出会いはいつだったのでしょうか?
「初めてヒップホップを聴いたのは7歳。あとから思うのは、自分が経験してきたことと同じようなことをラップしているから共感したんだと思う」

___ラッパーたちの言葉に魅力を感じたと。
「音楽と言葉の両方が衝撃だったけど、ヒップホップというのは音楽に乗せてストーリーを語っているんだと僕は思うんだ。そこにリアルなストーリーがあるんだけど、嘘っぽいビデオとかたくさんある。本当のヒップホップの姿をみせているものがなかったから、それがきっかけで『FREESTYLE』を撮ろうと思ったんだ」

___『フリースタイル』を見させていただいて、情熱やパイオニア精神などのすごく熱いものを感じたのですが、ケヴィンさん自身が近くでラッパーたちを見てきて、彼らの情熱はどこからきていると思いますか?
「その答えを見つけようと思ってこの映画を撮ったんだ。個人的には思うのは、アフリカ人たちの文化というのはずっと抑圧されていて、その思いを自分達で表現したことから爆発的に始まったと思う。それは、自たちの文化や怒り、喜びなどの感情などを表現する方法として、グラフィティーやフリースタイルをするんだと思う」

___ケヴィンさんが強く影響をうけたアーティストは?
「1番は、自分の周りにいる友だち。今は有名になったけど、フリースタイル・フェローシップやアザワイズ、カット・ケミストとか当時は全然知られてなくて、すごく実力のある人たちだからもっといろんな人に知って欲しいと思っていたよ。それで映画も撮りはじめたしね」

___ケヴィンさんの周りには、ラッパーのみならず素晴らしいDJもいるのに今回DJではなくて、フリースタイルをテーマにしたのはなぜ?
「実は次に作ろうと思っている映画がDJを題材にしているんだけど、今回なぜフリースタイルにしたかというと、『スクラッチ』の監督のダグ・プレイとクラブで遭遇したことがあって、自分は許可がなかったからDJクラッシュの撮影ができず、そのダグが撮影をして映画を作ってしまったから(笑)。本当は、DJの人に怒られるかもしれないけど、DJはテクニックを競うものだけど、フリースタイルはそれぞれの思考や複雑なストーリーを語ることができる。深みがあって魅力的だと思ってね。ちなみに次の作品には、絶対DJクラッシュはだしたいと思ってるよ(笑)」

___ケヴィンさん自身はフリースタイルはしないのですか?
「BBCに取材をされた時にぜひやって欲しいと言われてやったことがあるんだけど、めちゃくちゃひどくて、それからはしないと決めたんだ(笑)」

___『フリースタイル』を作品としてご自身で見た時に映像にしてみて、初めて気付いたことはありますか。
「一番学んだことってたくさんあったんだけど、映画の作りかたってところですごく勉強になったよ。編集の仕方とか全然考えてなかったんだけど、ミックステープみたいにいろんなフリースタイルを集めて作ればいいと思っていたんだけど、映画にするにはストーリーを作っていかなくてはいけないというの学んだよ。それにそのスト―リーを作るには、歴史や文化背景とかの綿密な調査も必要になってくるしね。あと、実はフリースタイルをしてるように見せてしてない人が多かった(笑)。いかにもフリースタイルをしているようにやってるんだけど、同じ人を何度も撮影していると同じことを言っていたりして。それも一つの発見だったよ(笑)」

___今回B+がデザインなどを手掛けていますね。
「うん。ずっと昔からの仲のいい友だちだよ。彼も「Keepintime」と「brazilintime」というヒップホップを題材にした映画を作っているんだ。あと過去に、「イッツ・ノット・アバウト・サラリー」っていうロスのヒップホップ・シーンのことを書いた本も出しているんだ。ロスのヒップヒップ・シーンを初期から写真を撮っている人で、ポスターになっている写真が、初めてジュラシック5のDJヌマークとカット・ケミストが初めて出会ったパーティーで僕もDJをしていて、ブレイケストラも初めて出会ったパーティーなんだ。それにね、僕もアイルランド系の血が入っているんだけど、彼はアイルランド人なんだ。彼はアイルランド人なのに、ロスのヒップホップの一番の写真家っていうのが今考えるとすごい驚きだよね」

___先ほどお話にもありました次回作は現在どのような進行ですか?
「これから撮影を始めようかなというところだよ。今出演者も探しているところだから、出たい人はメールして下さい(笑)」

___なぜ舞台を東京とアメリカに?
「日本ではアメリカの文化をすごく理解されているのに対して、アメリカ人は日本のことを知らない。その対比が面白いんじゃないかなって。日本は未来的なのにアメリカは遅れていて、その対比も面白いし。アメリカ人のDJが日本へくるとすごく有名人扱いされるのも面白いよ。そういうコントラストを見せたいなと」

___東京のヒップホップ・シーンや音楽シーンをどう感じていますか?
「日本にはアメリカよりもいいレコードがたくさんある。日本人は、知識や研究熱心だ。ベルリンに「ソール・トレイラー」っていう日本人がやっているレコード屋があって、自分の欲しかったレコードの名前を言ったらすべて揃ってしまったことがあるよ」

___最後にフリースタイルやDJなど始める日本の若者たちに求めるものはありますか?
「一番いいたいのはMTVの真似をするな。自分が心から言いたいことや自分の体験をもとに表現して欲しい。MTVによった違った解釈でヒップホップが伝わってしまって、その真似をするからすごく変なものが他の国で作られてしまっている。僕はヒップホップというのは“ラヴ”だと思う。家族や友だちに対する愛を言葉にして欲しい」


JURASSIC 5

MOS DEF

CRAIG G vs SUPERNATURAL
a film by Kevin Fizgerald
(c)Organic Films

photo by B+
◆Kevin Fitzgerald(ケヴィン・フィッツジェラルド)
ヤ70年代初め、母ウェストインディアン父アイルランド系アメリカ人の元NYで生まれる。10歳でLAへ引っ越し14歳よりDJオーガニックの名でDJを始める。小学校では、ジュラシック5のカット・ケミストと同級生でもある。DJとしてイベント「The Breaks」を立ち上げ、現在ではジュラシック5やマッド・リブ、ビート・ジャンキーズなど出演するLAを代表する人気クラブ<Root Down>へと発展。その後映画監督の道へ進み、ある日サウスセントラルの健康食カフェ「Good Life」で開かれたオープンマイク・イベントで衝撃を受け、「FREESTYLE」を撮りはじめ、このたび初監督作品が公開される。
『フリースタイル:アート・オブ・ライム』
【監督】ケビン・フィッツジェラルド 【制作年】2004年
【制作国】アメリカ合衆国
【上映分数】71分
【配給】ナウオンメディア株式会社
クレジット:a film by Kevin Fizgerald (c)Organic Films
http://www.nowonmedia.com/FREESTYLE/
2005年4月16(土)よりシブヤ・シネマ・ソサエティにてレイトロードショー
◆上映時間:連日21:20よりレイトショー1回上映
◆料金:一般:\1,500-、大学生:\1,200-、高シニア:\1,000-
シネマ・ソサエティ http://www.cinema-voice.com/
・マークシティ4Fを道玄坂上方面へ進みラジオ局の裏手。
・道玄坂を上がり道玄坂上交番前交差点を左折、酒屋を左折。
・井の頭線渋谷駅西口下車、マークシティ沿い坂上。